『杉田文学』29号より ①
「精神病の透明な壁」
らぴゅた
〈兆候〉
息子を保育園に預けたまま、何故かそのまま電車に乗って北へと揺られた。仙台駅で一週間過ごした。金も無くなり横浜のアパートに帰った。捜索願が出ていた。暴れて電話機を投げつけて壊した。身体の凝り(仮面うつ病)がひどい。不眠が続く。引きこもる。ひどい疲れに苛まされる。それから・・・
〈精神病と告知されて〉
あの時は雨が降っていた。びしょ濡れだった。精神科のクリニックの自動扉を前にして何度引き返したか、そして何度押すことをためらったか。
ドアーの向こうの世界とこっちの世界。僕は倒れこむようにして向こうの世界へと入った。大勢の「患者」でロビーはいっぱいだった。バッハのG線上のアリアが静かに流れていた。何ともお似合いだ。
検査の結果、重度のうつ病だと診断された。病気
? 病気・・・何となく思っていたけれど・・・。怖さと安心感の入り混じった不思議な気持ち。
それからは向こうの世界が今の世界となった。やがて「精神障害者手帳」が送られてきた。その境の見えない壁はどこまでも透明で冷たい・・・。
〈はじめての入院〉
三浦半島の丘にある病院に入院することになった。京急電車に座りながら海を眺めた。何故かな、悲しくて涙が頬を流れた。
初めての精神病院に入院した。手続きをして鉄の重いドアーの向こうへ案内された。「ガチャリ」という重い無機質な音・・・。閉鎖病棟に似合う響き。
〈自死念慮〉
ストレスに心が引きちぎられる。「消えてしまいたい」。何度、駅のホームでためらったか。大量服薬を数十回繰り返す。救急搬送されるが覚えていない。蛍光灯の白い光が瞼を透けて見える。「生きていたのか・・・」。点滴、尿道管、胃洗浄、管だらけで目を覚ます。
家族は僕から離れていく・・・
僕もどうしようもない孤独感に陥る。
精神病は周囲を不幸に巻き込む。そして・・・別居・・・離婚。
〈透明な壁〉
精神障がい者にある透明の壁。健常者の友人とは会えない。「何の仕事してるの?」その普通の何気ない会話が出来ない。まして、生活保護を受給してるとは言えない。
いわゆる「障害者差別解消法」は「全ての国民が、障害の有無に関係なく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」を理念に謳うが、それには「精神障害者」であると曝け出さねばならない。それが何とも辛いのです。だけど、一歩踏み出す勇気が必要なのです。
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