一篇紹介
今日の「詩の朗読サークル」は、参加者は四名。時間もあったので、朗読後に皆さんで詩作について話したりしました。
今日の発表作品の一篇です。文字にしてここに紹介するのは本当は活動の趣旨から外れるのですが、メンバーが声に出して朗読している、と想像してお読みになって下さい。
『キズナ』
俺には夢が無い
中学を卒業して就職したけれど
就職した会社が倒産し職を失った
今やホームレスとなった
人間同士のきずななんて、社会との絆なんて信じなくなっていった
段ボールをコンビニからもらって
簡易ベッドを作って寝る
たまに役所がくれる小遣いを貯めて
週末は競馬で使う
役所がくれる生活費をギャンブルに使うなどもってのほかだと言われるけれど
これだけが俺の楽しみだ
今日のレースはG1レース日本ダービー
日本中の競馬ファンが熱狂するクラシックレース
俺も小遣いを全部注ぎ込んで一番人気の武豊鞍上の『キズナ』という馬の馬券を買った
キズナという馬名はこんな俺でも社会に繋がっていたいなという思いを起こさせた
さぁ、ラジオの前でホームレス仲間とスタンバイ
G1のファンファーレが聞こえると、俺の鼓動も高まっていく
さぁレースのスタートだ
俺の夢をのせてキズナは颯爽と走っていった
最終コーナー直線でレースが決まる
俺は「行け、行け、キズナ行けーっ」と叫んだ
ラジオの実況はヒートアップしていく
「残り400を切った、外からキズナ、キズナ、キズナが出てきた!
武豊が夢をのせてキズナ、キズナ、キズナが逃げ切って一着ゴールイン!」
俺はラジオの前で「ヤッターっ」と絶叫した
キズナが勝ち、ちょっとの配当しか貰えなかったけれど
俺はキズナと言う馬から、社会との絆がまた繋がることを信じたいと思った
人間なんて信じていなかったけれど、
ホームレスの俺でも少し前向きに、人を信じていきたいと強く思った
ありがとうキズナ
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