決断の時
障害者のグループホームのような共同住居で暮らしている50代男性Hさんの長きにわたっての悩みは、同居人の男性から毎日のように生活上のアドバイスを事細かに受け、それに従って自分のペースを崩してしまう為に、大きなストレスになっていることでした。あくまでもその男性が「好意」からHさんにアドバイスをしていることが、人の良い争い事を好まないHさんの心理的なプレッシャーを強くしていました。
Hさんの訴えが繰り返されるので、サブミーティングでみんなで解決策を話し合いました。「共同住居の職員に言う」「共同住居のミーティングで言う」「本人に言う」「手紙を書く」「その人に従う」「アドバイスを無視する」「聞き流して自分のペースを守る」等々・・・メンバーからいくつもの対処法が提案されました。一番多かったのは「本人に、自分のペースで生活することを言う」でした・・・Hさんはいつも神妙に聞いていました。Hさんの悩みについてのサブ・ミーティングは半年以上ランダムに開かれました。Hさんの訴えが繰り返されたからです。しかし残念ながら、Hさんはみんなのアドバイスを何一つ行動に移しませんでした・・・徐々にみんなも白けてしまい、Hさんの悩みはいつの間にか議題には上がらなくなりました。
それから2年以上たった最近、Hさんから伺いました。「僕この間はっきり言いましたよ。『あなたはあなたのペースで、自分は自分のペースで生活します』って。他にも色々言いたいことを言いました」・・・Hさん、なぜ今になって言うようになったんですか?
「それは、僕が言うって決断したからです」
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